第27話 お地蔵さんと地蔵盆に思うこと。

昭和四十年代にお地蔵さんブームが起きました。何故ならば子供が言う事を聞かないのは、親が犯してしまった水子の霊の祟りだといわれ、祟りを畏れ(おそれ)て、お寺に水子地蔵を寄進しました。それがきっかけで石材屋(せきざいや)さんとお寺が水子地蔵を大量に製作をして、水子を造ってしまった母親の罪の意識をあおり、水子地蔵墓地まであらわれ、地蔵ブームが始まったのです。ただ親子の亀裂(きれつ)を畏れて水子地蔵を寄進したのでは、本当の水子供養にはならない為、子供はますます親の言う事は聞きません。ひどい親になると罪の意識を癒す為に、何十体もの水子地蔵を寄進する始末です。

水子への罪の意識が消えた時、お寺には雨ざらしになった水子地蔵が寂しそうに何百体もたたずんでいました。

お地蔵さんの本当のお役目は人間の卑(いや)しい心や、貪(むさぼ)りの心や、怠け心や、怒りの心を取り除いて下さる、有難い仏様なのです。

仏教では人間の死後三十五日目に逢う閻魔大王(えんまだいおう)の本当の姿が地蔵菩薩なのです。

地蔵菩薩の話はとても長くなるのでまたの機会にお話ししますが、現代の複雑な世の中では悩んでも悩みきれないほどの苦労を背負って生きていかなければならない時に、ふと街角で出会える仏様が、地蔵菩薩なのです。お地蔵さんは、お釈迦様の滅後(めつご)、弥勒菩薩(みろくぼさつ)が五十六億七千万年後に弥勒如来になって現れ、世の悩める人達を救って下さるまでの間を、その代りをしてくださる有難い仏様なのです。八月は地蔵盆の月です。「地蔵盆」は懺悔盆(ざんげぼん)とも呼ばれ、日頃犯した様々な罪、知って犯した罪、知らずに犯した罪、殺生の罪等、を懺悔する為の供養でもあるのです。懺悔の供養には「畜虫草木(ちくちゅうそうもく)一切霊」の供養とそして「処縁(しょえん)一切霊」の供養などがあります。

吉祥寺・昇華山阿羅耶識院本堂の
京都・奈良の名刹寺院の仏像(写仏)三十八体の一体
京都大原三千院勢至菩薩
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